「新嘗祭」からみる日本人の伝統的な食事
こんにちは!
昨日は祝日でしたね。みなさま、どんなふうにすごされたでしょうか。
11月23日(火)は「勤労感謝の日」であると同時に「新嘗祭」でもありました。
「新嘗祭」とは、天皇家がその年に日本で収穫されたものを神にささげて、ささげ終わったものを召し上がる儀式。
大地のめぐみに感謝し、お祝いするタイミングです。
戦前は「勤労感謝の日」ではなく「新嘗祭」として知られていたそう。
今日は「新嘗祭」に各都道府県から天皇家に奉納された食材リストから
- 日本人が伝統的に食べてきたもの
- わたしたちに必要な栄養源
について考えていきたいと思います。
「食」にご興味のある方、迷いを感じている方はぜひご一読いただけるとうれしいです。
「新嘗祭」に献上された食材リスト
令和元年の「大嘗祭」(天皇が即位されたはじめての「新嘗祭」)に、各都道府県から宮内庁に献上された食材リストがこちら↓
断食でお世話になった磯貝先生のお父さまで自然農のエキスパートである磯貝香津夫氏が、農業新聞からリストアップしてくださったものです。
基本的に各県の特産品がおさめられている様子。
「お米」はこのリストとは別に、しっかり奉納されています。
さて、今日はクイズです。
この食材リストには「ある特徴」があります。
どんな特徴だと思われますか?
チッチッチッチ…チーン(タイマーの音)
え?「干ししいたけ」が多い?
たしかに~!
長持ちするからなのでしょう。乾物が多いですよね。
「干しアユ」「干しホタテ貝柱」「干し昆布」…なんてものまであります。
でも「乾物が多い」はクイズの正解ではありません。
日本人の伝統的な食習慣
他になにか、この食材リストの特徴が思い浮かぶでしょうか?
正解は…「肉と乳製品がない」こと!
各地の特産品ならお肉や乳製品もランクインしそうなものですが、ここには一切ふくまれていません。
つまり日本人は伝統的に「肉や乳製品」を食べていなかったことがわかる…と磯貝氏は分析されていました。
みなさま、675年に天武天皇が「肉食禁止令」を出してから、明治4年まで解禁されていなかったという事実をご存じでしょうか。
約1200年あまりの間、日本では肉食の習慣がなかったのです。
牛乳を飲む習慣もありませんでした。
今でも「牛乳を飲むとお腹がゆるくなる人」が一定数いるのは、牛乳を飲む習慣がなかったことと関係しているのではないでしょう。
わたしたちは、もともとはここでリストアップされた食材を「ごちそう」として食べる暮らしをしていたはず。
長い間、肉や乳製品がなくても元気にくらしてきた子孫がわたしたちということです。
一方で、西洋やインドでは古くから牛乳が愛飲されてきました。
インド人が「牛乳は体にいい」と善意ですすめてきても、食歴が全然違うので日本人にあてはまるとは限りません。
腸の長さはもちろんのこと、腸内環境が住む地域で大きく異なる(=消化できるものが異なる)ということが最近の研究で知られてています。
魚もそんなに必要ない…?!
上でご紹介した「大嘗祭」に献上された食品リストを分類すると、こんな感じになります。
野菜と果物だけで約半数をしめ、きのこや海藻などをふくめると8割以上が植物性の食材です。
「魚類」は17%と2割を下まわりました。
ちなみにこれは「ごちそうリスト」のはず。
なぜなら豊穣を祝うハレのお祭りに、各地方の「本当に美味しいもの」が献上されたリストだからです。
「ごちそう」リストのなかで魚類が約2割ということは、日常で食べる頻度はもっと少なかった可能性が考えらえます。
日常では「週に1回魚を食べる」でもちょっと多いくらいかもしれません。
漁村にでも住んでいないかぎり、毎日「魚」を食べられた人は少なかったのではないでしょうか。
「野菜中心の食事は栄養不足」は誤解
わたし自身はベジタリアン歴8年あまり。
「動物性のものを食べなくても大丈夫だよ~」という考え方ですが、みなさんに押しつけるつもりはありません。
ただよく言われる「野菜中心の食事だと栄養不足になる」という考えは誤解だとお伝えしておきたいところ。
わたしたちは、約1200年ほど、穀物と野菜中心のくらしをしてきたという歴史(実績)があるからです。
ときどき、肉や魚を「そんなにほしくない」のに「栄養として必要だから、がんばって食べる」という話をお聞きします。
あるいは、野菜中心の食事に移行しようと思っている人が
- 「ベジタリアンは栄養が足りない」
- 「肉を食べないと元気がでない」
とまわりから言われて、くじけてしまうという話をお聞きすることもあります。
そんなときは、今回のように「伝統的なくらし」にさかのぼって考えてみると、わたしたち日本人にとって必要なものがみえてくるかもしれません。
いずれにせよ、
- 「体にいいと聞いたから、毎日食べる」
- 「体に悪いと聞いたから、二度と食べない」
という「誰かの基準」にしがたうのではなく、
自分自身の体の声をきいて、必要なものを必要なタイミングでとりいれられるといいと思っています。
収穫された自然のめぐみに感謝し、ありがたくいただきたいですね。