マコモの「根深い」話
こんにちは!
今日は神在月に旅した出雲の話の続きです。
今回、出雲を訪れた目的は、「マコモの根を収穫すること」でした。
マコモとは、イネ科の多年草。
秋の味覚「マコモダケ」で知られるだけでなく、「神宿る草」として、古くからご神事に用いられてきました。
実際、出雲大社の「しめ縄」はマコモでできています。
そんなマコモには大きく「在来種」と「外来種」の2種類があり、
マコモダケが実るのは、主に「外来種」の方です。
「外来種」は中国から入ってきたマコモですが、平安時代頃にはすでに「マコモダケ」が食されていたようなので、こちらも歴史が深いです。
さて、「外来種」のマコモは、マコモダケに栄養がいくので、
「根っこ」はそれほど発達しておらず、するっと抜けると聞きます。
一方で、「在来種」のマコモは、マコモダケが実らない分、
根をしっかりと発達させ、栄養を蓄えているのだとか。
わたしが「ヨニピチュ」で利用しているマコモは、
マコモの葉だけでなく、根も使われています。
実際にマコモの根がどんな様子なのか知りたい!と思い、出雲に飛んだのでした。
在来種のマコモの根は、毛細血管のように細い根がからみあっていると聞いていましたが…
実際は想像以上でした。
今日は、そんな「マコモの根っこ」を中心にレポートしましょう。
Contents
日本の原風景と死のドライブ
マコモの畑があるのは、「山王寺の棚田」という美しい地区です。
山から湧きでる清らかな水と太陽の光で、マコモやお米がすくすくと育っていました。
農薬や化学肥料を使う人がいない上に標高が高いため、
「自分の畑は自然栽培だけど、隣の畑が慣行農法で、地下を通じて農薬や化学肥料で汚染される」心配がありません。
まるで、日本の原風景のような、それはそれは美しい清らかな場所でした。
アクセスは「街から車で30分ほど」「交通量が少ない一本道」だと聞いていたので、
初心者マークのわたしでも車で行けるだろうと軽く考えていましたが…
曲がりくねった細い山道は恐怖の連続で、死を覚悟するドライブになったのでした。
見通しが悪く、対向車がいつあらわれるかわからない上に、
崖と川に囲まれた細い道は、中央を走っていないと危険な感じです。
落石も怖いですし、手に汗を握りながら、命からがら到着したのでした。
マコモの根深い話
さて、徒歩でさらに上へと登り、マコモ畑で「根っこ」を収穫させていただきます。
わたしが訪れた11月後半は、すでにマコモの葉も根も収穫がほぼ完了していました。
マコモの株の脇から深くシャベルを入れて、からみあうマコモの根を断ち切ります。
マコモの根は下にも左右にも広がっているので、「1つの株の根っこごと収穫する」のは無理な話。
からみあう根っこの関係性を断ち切り、株に近い部分の根を収穫させていただく…という感じでしょうか。
根深いマコモの根の氷山の一角をいただくのです。
4方向から根を断ち切って、ぐぐっと力を入れて、地面から引き上げます。
なかなか力がいる作業ですし、根がうまく断ち切れなくて、株が行方不明になったりしました。
そして、1本1本の根が泥をしっかりと抱えこんでいるので、引き抜くにも力がいります。
両手で根をつかんで持ち運ぼうとすると、「よっこいしょー」と声がでるくらいの重さでした。
洗うと「黄金の根っこ」があらわれる
収穫したマコモの根は、台車にのせて洗い場まで運びます。
前述したように1株だけでも相当な重量なので、数株もあると人力では持ちきれません。
四角いコンテナの中にマコモの根を入れて、水ですすぎます。
根をほぐして洗うだけでしょ?と思われるかもしれませんが、そんな簡単な話ではないのです。
マコモの根が泥を抱えこんでいるし、根と根もからみあっているので、簡単に泥を洗い流せません。
まるで、生まれてから一度も髪を洗ったことがない人の頭を洗浄していくかのよう。
体ごとコンテナの中に入って、足で根をふんで、泥を落としていきました。
ドロドロになったコンテナの水を変えて、何度も同じ作業をくりかえすと…
手でほぐせるようになってきます。
土は完全に落ちませんが、だんだんとコンテナの中の水が透明になり、
マコモの根が黄金に輝くころ、洗浄は完了となります。
マコモの根から、わたしたちの「腸」を考える
さて、マコモの根を観察していると、なかなか面白いです。
1つの株から、たくさんの細い根がのびていて、1つ1つの根に細かい毛がびっしりとついています。
植物の「根」は、動物でいうと「腸」にあたると伺いました。
わたしたちの腸が、絨毛で覆われて、水分や栄養を存分に吸収するように…
マコモの根もたくさんの毛を生やして、根の表面積を大きくして、土壌の栄養をしっかりと吸収しているのでしょう。
マコモの根を収穫するときに、なかなか根が断ち切れなかったように…
根は手でひっぱっても簡単にちぎれませんし、口に入れて噛んでも、いつまでも繊維が残って食べきれませんでした。
マコモの根のような、これほど健やかな「腸」があるでしょうか。
わたしたちの腸は、こんなに豊かで力強い絨毛を生やせているだろうか?と考えされられます。
縁結びの神様は、ここにいた!
植物の「根」は、土からエネルギーを吸収するとともに…
根をとおして、土壌の微生物や菌・他の植物ともコミュニケーションをとっていることが明らかになってきています。
根にたくさん生えている毛は、情報をキャッチする「アンテナ」でもあるのです。
これだけたくさんの根がからみあって、根っこどうし、他の植物と、微生物や菌類とどのような話をしているのか…想像すると面白くないでしょうか。
わたしが来たことも話題になっているかもしれません。
そんなマコモの根を見ていると、まるで「縁結びの神様」のようだと感じたのでした。
出雲では、神在月に全国の神様が集まり、人と人とのご縁を決めると言われますが…
実際に様々な情報を交換しあい、ご縁をつないでくれているのは、マコモをはじめとする植物かもしれません。
だって、植物は地面を通じて、地球の裏側までつながることができます。
地球の裏側に住む人や動物の情報をキャッチできるといっても過言ではないはず。
もちろん、マコモの根が「縁結びの神様」だというのは、わたしの想像にすぎませんが、
植物がつないでくれるご縁を考えると…意外と的を射ているように思うのです。
マコモの根の効能と使い方
さて、長々とマコモの根の話をしてきましたが、
マコモの根はどんな効能があってどんな使い方をするか、最後にご紹介しましょう。
マコモの根は、1891年に書かれた日本の薬学書「和漢薬書」の中で、
根は無毒で、止小便利、解毒の作用を持ち、喉の渇き、胃腸病、胸やけ、やけどの傷、毒蛇にかまれた時、二日酔いなどの卓効あり、婦人病に効く
と記されています。
冒頭でご紹介したように、在来種のマコモは、マコモダケがなりません。
だから、栄養を根にたくわえるのです。
栄養たっぷりのマコモの根をどのようにとりいれるかというと…
乾燥した根を細かくきざんで、「マコモ蒸し」の浴剤に使います。
つまり、デリケートゾーンから根の蒸気をとりいれていただけるのです。
個人的には、マコモの根を煎じて飲みはじめました。
根は苦みや渋みがなく、ほんのりとした甘みがあります。
「お茶」としておいしくいただける上に、
マコモの根のお茶を飲むと、体がふわ~っとゆるみ、心地よくリラックスできるように感じます。
少し続けてみて、何か変化があればご報告しますね。
マコモ蒸しを体験したい方は、こちらからご予約ください。