潜入!シク教のお寺「グルドワーラ」
こんにちは!
子どもの頃の記憶をたどると…わたしが生まれてはじめて見たインド人は、
ターバンを頭に巻いた男性でした。
長い間、インド人=ターバンを巻いた人だと思ってきましたが、
実はターバンを巻くインド人はそれほど多くありません。
ターバンを巻いた人たちは、シク教徒である可能性が高く、
シク教徒はインド全体では2%弱にすぎないそうです。
…といっても、インドの人口はものすごいですから…
ほんの2%でも、およそ2,400万人ほどいる計算になりますね。
シク教後は比較的ビジネスに長けているといわれ、
国内外で経済的な成功をおさめているケースが多いと聞きます。
そんなシク教徒のお寺を「グルドワーラ」を呼ぶのをご存じでしょうか?
今日はインド滞在中に「グルドワーラ」を訪ねた様子をご紹介しましょう。
「グルドワーラ」って何?
南インドでは、「テンプル」といえば一般的にヒンドゥーのお寺を指し、
シク教徒のお寺は「グルドワーラ」と呼ばれます。
グル(師匠)のいる場所、という意味なのだとか。
南インドのケララ州で唯一の「グルドワーラ」が滞在場所の近くにあると聞いて、訪ねました。
なぜケララ州に1つしか「グルドワーラ」が存在しないかというと…
単純にシク教徒が少ないからです。
シク教徒は北インドに多く、北のパンジャーブ州では人口の約6割を占めるそうですが…
一方、南のケララ州では0.01%にすぎないとのこと。
そんな「グルドワーラ」は、シク教徒だけでなく、誰でも気軽に訪問できます。
シク教徒のみなさんはとても親切。
はじめて訪れたわたしを気づかって、いろいろと教えてくれました。
シク教は信仰の対象が「グルの言葉」であり、グルが残した「経典」を大切にしているそうです。
つまり、「偶像崇拝」をおこなわないので、神様の像などは祭壇に存在しません。
祭壇には剣のほか、分厚い経典がお供えされていました。
「ランガー」って何?
シク教徒のお寺「グルドワーラ」には「ランガー」とよばれる、
無償で食事を提供するシステムがあります。
「ランガー」は予約不要。
誰もが気軽に参加できます。
- シク教徒でなくても、
- 外国人でも、
- 性別や職業が何であっても、
誰でもウェルカム!ご飯をご馳走になれます。
わたしが訪問した南インド・ケララ州のグルドワーラは、
水曜日の夜と日曜日の昼が「ランガー」でした。
「ランガー」に参加するには、グルドワーラの門を入って、まず靴をぬいで手足を洗います。
日曜のお昼は、ウェルカムドリンクとしてライムジュースが配られていましたよ。
建物に入る際には、髪をスカーフで隠す必要があります。
シク教徒は男性なら頭にターバンを巻き、女性ならスカーフで髪を隠すのです。
スカーフは貸し出しを行っているので持参しなくても大丈夫。
お借りしたスカーフを頭に巻いて、お祈りのホールに向かいました。
祭壇でお祈りをささげ、パンジャーブ語の経典を聞き、キールタンとよばれる宗教音楽を楽しんだあとは、
お供えのおさがり「プラサード」を一人ひとりいただきます。
食事提供の仕組み
お祈りの時間が終わったら、食堂に移動します。
食堂には、床の上にゴザのようなものが何列も敷かれていて、着席すると食事が提供されます。
基本的には右手を使って、静かに食事を楽しみます。
宗教施設なので辛味が少なく、油もひかえめ。
素朴な味つけがおいしい!です。
ご飯やチャパティ、おかずなどの「おかわり」を配る人が次々にやってくるので、必要な量を追加できました。
各人が「食べたいだけ、食べられる」仕組み。
お水を配る係もいますし、デザートもありますから、至れり尽くせりといえるでしょうか。
つまり…
- 食材を提供する人
- 寄付をする人
- 調理する人
- 給仕をする人
- 洗い物をする人
- 履物の整理をする人
など、さまざまな人の労力により、「ランガー」が営まれているのです。
わたしが訪れた南インド・ケララ州の「グルドワーラ」はそれほど大きな規模ではないですが、
日曜のランチには、100人くらいが来訪していました。
一方、シク教徒の総本山であるパンジャーブ州の「ゴールデン・テンプル」では
毎日10万食分もの食事が無償で提供されるそうです。
「聖者たちの食卓」という映画でその様子が描かれていますので、ご興味ある方はぜひご覧ください。
医療も無料で受けられる?!
今回ご紹介した「グルドワーラ」では、医療を無償で提供する日があると伺いました。
インドでは、日本のように社会保障が十分ではない分、
このように宗教を通じたコミュニティでの助け合いが一般的です。
つまり、仮にお金がなくても…
無料のご飯を食べられ、医療を受けられるわけです。
ご飯を食べたからと言って「じゃあ、入信しろ!」などとは言われませんし、
寄付を求められることもありません。
- ご飯を食べる自由
- 寄付をする自由
- 労力を提供する自由
…が各人にゆだねられていて、相互に支えあう仕組みといえるでしょうか。
なお、ヒンドゥーのお寺でも同様の仕組みがあります。
毎日、無償で食事を提供しているヒンドゥー寺院やグルクラムもありますし、
子どもたちの教育が無償で提供されていたりもしますね。
アーユルヴェーダのパンチャカルマを無料や低価格で受けられる場所もあります。
なぜ無料かというと、繰り返しになりますが…
寄付をする人や無償で働く人がいるからであって、このように社会で支えあうシステムは素敵ですね。
「グルドワーラ」の「ランガー」は誰でも歓迎され、参加の仕方はさまざま。
インドを訪れたら、ぜひご参加いただければと思います。