会える!ド派手な南インドの神様

こんにちは!
インドには、たくさんの神様がいます。

ヨガの神様でおなじみのシヴァ神をはじめ

  • ヴィシュヌ神
  • ブランマ神
  • ラーマ神
  • クリシュナ神
  • ガネーシャ神
  • ラクシュミー女神

…と数えきれないくらいです。

ヒンドゥーの神々の物語
神様相関図

ここでご紹介した神様は、いわゆる「スーパースター」と申しますか…
インドで誰もが知る神様ですが、一方、各地域で信仰される固有の神様も存在します。

たとえば、南インドのケララ州には、カラフルでド派手な神様が存在するのをご存じでしょうか。

ドドーン(お披露目の音)↓

今回のインド旅で遭遇した神様の名前は「ムッタッパ」(Muthappan)です。
ムッタッパは寺院にただ鎮座する神様ではありません。

ムッタッパの御霊を特定の「人」におろして、
ド派手な衣装とにぎやかなダンスで人々を祝福してくれるのです。

今日は、ケララ州北部の地元の神様「ムッタッパ」についてご紹介しましょう。

地元に根づくド派手な神様の正体は?

南インドのケララ州の北部では、「テイヤム」とよばれるお祭りがあります。

赤や黄色などに顔を染めたりお面をかぶったりした、ド派手な衣装の神様が踊る儀式です。

踊っている人自体が「神」ではありませんが、ある種の聖なる力をもつ人であり…
神様の御霊をおろして、ダンスなどのパフォーマンスをおこなうのだとか。

このパフォーマンスをおこなう人は男性が多く、
どちらかというと低いカーストに属すると聞きました。

民間信仰と庶民の神様

シヴァラートリー

シヴァ神やヴィシュヌ神をおまつりする一般的なヒンドゥー寺院では、前述のようなパフォーマンスはおこなわれません。

調べると、「テイヤム」は随分古い時代からの民間信仰に由来するようです。

シヴァ神やヴィシュヌ神…というコンセプトが存在する前の、
いわば狩猟を行っていたような古代から信仰されてきた神様なのだとか。

南インドは、北方からアーリア人が入ってくる前は、黒い肌をもつドラヴィダ系の民族により栄えた地域として知られます。

今でも北インドの人と南インドの人では、外見が少しちがうでしょうか。
具体的には、北インドで肌が白く、南インドで肌が黒い人が多いように思います。

北インド系イメージ
南インド系イメージ

アーリア人の支配により、南インドでは、しいたげられ差別される人々が生まれました。
差別された人々は、一般的なヒンドゥーの寺院に立ち入るのも制限されたそうです。

そんな中で、「テイヤム」に象徴されるド派手な神様たちは大衆の味方であり、
差別される人や弱者もふくめて、すべてを受け入れる神様だった
のだとか。

なんだか懐の深い神様ではないでしょうか。

「ムッタッパ」の相棒は犬

わたしが最初に訪れたパルシニカ寺院は、「ムッタッパ」とよばれる地元の神様の総本山のようなお寺でした。

参拝の前に川で足を洗う
階段をおりると川

お寺の入口には「狛犬?」と見間違いそうな…犬の像が二匹むかいあっています。

パルシニカ寺院
犬好きにはたまらない!?

実は、「ムッタッパ」と呼ばれる黄色い顔をした神様は
ジヴァ神が「狩人」の形としてあらわれたお姿
と考えるそうです。

ムッタッパ

古代からの土着の信仰と、インドの三大神「シヴァ神」が結びついた結果、
「シバ神の狩人バージョン」として信仰されるようになったのかもしれません。

「狩人」なので「狩猟犬」が相棒であり、犬の像が寺院の入り口を守っているというわけですね。

お寺の内部は写真撮影できませんでしたが、お堂の前に大きな犬が数匹、お昼寝していました。

「シャーンシャーン」という大きな音をたてた儀式がはじまっても
「われ関せず…」とばかりにお昼寝をつづけておられたので、慣れっこなのでしょう。

神への捧げものを最初にいただくのも、お犬様だと聞きました。

ヒンドゥーの文化では、「牛」は神様に近い存在ですが、
犬は相対的に地位が低いと聞きます。

地位は低いものの、相棒として生活に欠かせない犬がまつられているあたり、
庶民の神様といえるのかもしれませんね。

めずらしい「プラサード」

ヒンドゥーの一般的なお寺では、神様への捧げものはココナッツなどのフルーツやお米を甘く煮たパヤサム、ギーなどが多い印象ですが…

「ムッタッパ」をまつる寺院では、

  • ココヤシのワイン

などが捧げられるそうです。

神様にアルコールを捧げるとはユニークですし、
魚など肉食を捧げるのも、「狩人」の神様だからこその「血なまぐさ」があるように感じます。

お寺でのお祈りの後は、捧げもののおさがりである「プラサード」をいただきました。
パルシニカ寺院のプラサードは、なんと塩味のきいた豆とココナッツ、そしてチャイです。

塩味のきいた豆とココナッツ
甘いチャイも配られる

一般的なヒンドゥー寺院の「プラサード」は、上述のとおり「フルーツ」や「パヤサム」などが多く、塩味の豆をいただいたのは初めてでした。

地元の人に聞くと、塩味の豆はパルシニカ寺特有のプラサードとのこと。

後日、アーユルヴェーダのセラピストが近所でおこなったプージャー(祈りの儀式)のプラサードを分けてくれましたが、ココナッツのほかナッツやレーズンなどがふくまれる甘いプラサードでした。

セラピストが分けてくれたプラサード

「ムッタッパ」のインドでの知名度

ケララ州北部の地元の人に「ムッタッパ」について話をすると、誰もが知っていて
「家にムッタッパの像を飾っている」「わたしは信奉者なのよ」とおっしゃる方も多いですが…

同じケララ州でも南部の知人に「ムッタッパ」の話をすると
「名前は聞いたことがあるけれど、よく知らない」という反応でした。

さらに、南インドではない地域に住むインド人に「ムッタッパ」について聞くと…
「聞いたことがない」という人もいれば、「発音の感じから南インドの神様だとわかるけれど、何を指すかは知らない」とのことで、総じて知名度は低いのでした。

地元の神様だけに、外部では広く知られていないのでしょうね。

さて、話が長くなってきたので今日はこのあたりで。
「ムッタッパ」から祝福を受けた話は、また別の記事でご紹介します。

Follow me!